予期せぬ幕切れと、男の矜持

玲奈さんとの食事は、非の打ち所がないほど完璧に進んでいた。 選んだのは、照明を落とした落ち着いたイタリアン。ワインの酔いも手伝って、会話のテンポは小気味よく弾み、二人の距離は物理的にも精神的にも、確実に「その先」を予感させる距離まで近づいていた。
デザートを終え、食後のコーヒーを啜る頃。シゾンの頭の中には、この後向かうべきホテルの候補がいくつか浮かんでいた。玲奈さんの潤んだ瞳と、時折見せるはにかんだような笑顔。それは明らかに、夜を共にする準備ができているサインだと確信していた。
しかし、彼女が「少しお手洗いに」と席を立ってから、空気は一変した。
戻ってきた玲奈さんの顔色は、さきほどまでの高揚した赤みを失い、どこか強張っている。 「大丈夫? 少し顔色が悪いみたいだけど」 シゾンが声をかけると、彼女は申し訳なさそうに視線を落とした。
「……すみません、なんだか、急に。」
その一言と、彼女が下腹部をさするような微かな仕草。シゾンは察した。 男には一生理解することのできない、しかし毎月確実に女性を訪れる、抗いようのない「身体の理(ことわり)」だ。
ここで無理にホテルへ誘うなど、愚の骨頂。いや、それ以前に男としての品格を疑われる。 「そろそろかな、とは思っていたんですけど、ちょうどさっき……」 「いいんだ。謝ることじゃない。むしろ、無理させてごめんね」
シゾンは迷うことなく、今夜のプランを白紙に戻した。 世の中には「それでも行ける」と豪語する強欲な男性会員もいるかもしれない。だが、身体の不調を抱える女性を隣に置いて、自分だけが快楽を貪って何が楽しいというのか。女性の身体の不思議、その痛みや重だるさは、男が想像力をどれだけ働かせても、その本質の1%にも届かない。
「電車はきついだろう。タクシーで帰りなよ」 シゾンは財布から多めのタクシー代を取り出し、彼女の手に握らせた。 「え? こんなに……いいんですか?」 「お釣りで温かい飲み物でも買って、家でゆっくり休んで。まずは自分の身体を一番に考えてね」
玲奈さんのタクシーを見送った後、夜の冷たい空気がシゾンの頬をなでた。 期待が大きかった分、正直なところ身体にはやり場のない熱が残っている。だが、不思議と嫌な気分ではなかった。
隠れ家BARでの邂逅:静寂とジャズと、予期せぬオーラ
さて、このまま帰るには、夜はまだ少しばかり若すぎる。 シゾンは、火照った頭を冷やすように夜の街を歩き出した。大通りから一本入った路地裏。そこに、ひっそりと佇む一枚板のドアを見つけた。看板は小さく、主張しすぎない。
「BAR……か。たまには独りも悪くないな」
重厚なドアを押し開けると、そこには別世界が広がっていた。 店内は、タバコの煙さえ芸術の一部に見えるような、深い琥珀色の空間。スピーカーからは、ビル・エヴァンスの繊細なピアノが、まるで耳元で囁くような音量で流れている。
「いらっしゃいませ。お一人様で?」 低く、落ち着いた声。カウンターの奥に立つバーテンダーは、仕立てのいいベストを纏い、まるでこの空間の一部のように馴染んでいた。 「はい。一人です」 「何かお飲み物は」 「お薦めのウィスキーを。ロックでお願いします」
手際よく氷が削られる音。クリスタルグラスの中で、丸い氷が琥珀色の液体に抱かれ、カランと高く短い音を立てた。 「いいBARですね。こういう本格的なところは初めてで」 「ありがとうございます。ここで店を出して、もう10年ほどになりますかね」
10年。その月日が、カウンターの木肌に独特の艶を与えているのだろう。 一口含んだウィスキーは、喉を熱く焼きながらも、驚くほど滑らかに鼻へと抜けた。
その時だった。 背後のドアが開く、乾いた音。 何気なくそちらへ目を向けたシゾンは、思わず息を呑んだ。
入ってきたのは、二人連れの女性。 驚くべきことに、二人ともテレビや映画で誰もが知る「超有名女優」だった。 変装のためのサングラスもしていない。キャップを深く被っているわけでもない。 しかし、彼女たちが一歩踏み出しただけで、BARの濃密な空気が一層凝縮されたような感覚に陥った。
(これが……オーラ、というやつか)
彼女たちは、慣れた様子でカウンターの端に座った。 不必要に騒ぐこともなく、ただそこにいるだけで絵になる。華やかな芸能界の喧騒を離れ、彼女たちもまた、この隠れ家の静寂を求めてやってきたのだろう。
収穫:前向きな明日への一杯
ふと、ポケットの中でスマホが震えた。 玲奈さんからだった。
『今日は本当にありがとうございました。せっかく誘ってくださったのに、台無しにしてしまってごめんなさい。……また、体調が落ち着いたらお会いしたいです』
そのメッセージを読み、シゾンは自然と口角が上がるのを感じた。 「台無し」なんてことはない。彼女がそう言ってくれるなら、今日の判断は正しかったのだ。
シゾンは返事を打つ。 『気にしないで。まずはゆっくり休んでね。今、すごく素敵なBARを見つけたんだ。次は体調の良い時に、二人でここに来よう』
送信ボタンを押し、最後の一口を飲み干す。 当初の予定だった「ホテル」というゴールには辿り着けなかった。 だが、代わりに手に入れたものがある。 玲奈さんからの信頼と、一人で静かに自分と向き合える最高の隠れ家。そして、ほんの少しの非日常的な遭遇。
人生、思い通りにいかない時こそ、その隙間に新しい楽しみが転がり込んでくるものだ。
「マスター、お会計を」 シゾンは席を立ち、少しだけ軽くなった足取りで夜の街へと戻っていった。 次にここを訪れる時は、隣に元気になった玲奈さんがいるはずだ。
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シゾン

