宵闇の西麻布と予感

東京の夜にはいくつかの階層がある。きらびやかなネオンが乱舞する六本木の交差点から、緩やかな坂を下って西麻布へと向かう。わずか数百メートル離れるだけで、街のノイズは嘘のように引き算され、代わりに大人の思惑としじまが路地裏を支配し始める。
5月の心地よい夜風が、仕立ての良いジャケットの裾を揺らした。今夜の待ち合わせは、西麻布の喧騒からさらに二歩、奥に入った場所にある看板のないワインバー。
重厚なオーク材のドアを開けると、そこには外の世界とは完全に隔絶された、仄暗く、しかし圧倒的に濃密な空間が広がっていた。カウンターの奥に並ぶクリスタルのグラスが、キャンドルの炎を拾って、まるで星屑のように怪しくきらめいている。
馴染みのバーテンダーが、声高にならず、しかし最高の敬意を込めて私を迎える。私は軽く頷き、カウンターの奥、最もプライベートが保たれるコーナーの席へと腰を下ろした。
時計の針は、約束の午後8時を回ろうとしている。今夜、私がここで待っているのは、THE SALONから紹介された一人の女性だ。
THE SALONで出会ったときの美咲さんについて

この女性は先日THE SALONにてセッティングして、連絡先交換をしたので今回はセッティング後のデートになる。
コンシェルジュから事前に届いていたオファーのメッセージには、今回の女性がコンシェルジュ一同で満場一致した今期最高峰のミューズであると書かれていた。信じがたいほどのプロポーションと、どこか憂いを帯びたノーブルな美貌を持ちながら、職業は極めて堅実な一般企業の事務職であるという。華やかな夜の街には一切染まっておらず、その透明感は奇跡的とも言える、という内容だった。
こうした文面というものは、多分にプロモーションのニュアンスが含まれるのが常である。
ネットに溢れるありきたりなマッチングサービスや、数を頼みにしたプラットフォームの甘い言葉に何度も苦々しい思いをしてきた男性であれば、こうした表現を半分は誇張、半分は事実程度に受け止めるのが賢明だと知っているはずだ。自分としても、いつものように過度な期待は持たずに待つことにしていた。
しかし、その諦観は、THE SALONの部屋のドアが開いた瞬間に脆くも崩れ去ることになる。
静かに、しかし確かな存在感を伴って、彼女は店内に現れた。
コンシェルジュに案内され、こちらへと歩いてくるシルエットを見た瞬間、私はスマホの手を止めた。なるほど、これは本物だと胸の奥で心地よい警告音が鳴るのを感じた。長年、クリエイティブの世界で数々のモデルや女優、時代のアイコンとなる美しい女性たちを見てきた私の目が、瞬時に彼女の異常なまでの素材の良さを見抜いていた。
ランウェイを歩かないミューズ
「改めまして…はじめまして。美咲です。」
彼女は私と目が合うと、少しはにかむように、しかし完璧にコントロールされた美しい所作で頭を下げた。その姿を間近で見て、私は心の中で二度目の感嘆の息を漏らした。
漆黒のワンピース。ブランドのロゴすら見当たらない極めてシンプルな仕立てだが、それがかえって、彼女の身体のラインの美しさを残酷なまでに際立たせている。スッと天に向かって伸びた細い首、そこからなだらかに繋がる美しい鎖骨。幾何学的に計算されたかのような長い手足と、極限まで絞られたウエスト。
身長は170センチ近くあるだろうか。ヒールを履いているとはいえ、その頭身のバランスは、ファッションショーのランウェイを歩くトップモデルや、ハイブランドのグローバルキャンペーンを飾るエグゼクティブ・モデルのそれと完全に一致していた。
エスコートされ、私の隣に座った彼女からは、微かに、しかし上品なパフュームの香りが漂った。甘ったるい安価なものではない。知性と洗練を感じさせる香りだ。
私は彼女の横顔を眺めていた。キャンドルの光に照らされた彼女の肌は、まるで内側から発光しているかのようにキメが細かく、陶器のような滑らかさを持っていた。鼻梁はすっきりと通り、唇は薄すぎず厚すぎず、気品ある弧を描いている。
どこからどう見ても、時代の寵児となるべきモデルそのものだった。だが、私の興味を最も惹きつけたのは、その完璧な容姿ではなく、彼女の纏う空気だった。
20分のトークが終わり、連絡先交換して解散
20分のトークが終わり、勿論デートをするつもりで退店を一緒にする。
お互いに時間がなかったので連絡先交換をしておくことに。そして本日、日程調整をしてデートに辿り着けた。
通常、これほどの美貌を持つ女性であれば、周囲の視線を集めることに慣れきっている。あるいは、自らの美しさを武器としてどう機能させるかを計算し尽くした、独特のギラつきや傲慢さが透けて見えるものだ。キャバクラや高級クラブなどの夜の街で出会う女性たち、あるいはSNSで何万人ものフォロワーを抱えるインフルエンサーたちにありがちな、あの消費されることを前提とした自己主張だ。
しかし、美咲という女性には、それが微塵もなかった。むしろ、自分の美しさに無自覚であるかのような、あるいはその美しさを隠すべきものとして扱っているかのような、奇妙なまでの静けさと謙虚さが同居していた。
「美咲さん、率直に伺ってもいいですか。」
私はシャンパーニュを一口含み、悪戯っぽく微笑みながら問いかけた。
「はい、何でしょう。」
「失礼ながら、そのお姿で何もしていないというのは、東京の七不思議に数えられてもおかしくない。芸能界や、ファッションモデルの世界から、毎日のように声がかかるはずですけど。なぜ、その道を歩まなかったのですか?」
彼女は一瞬、大きな瞳を丸くしたが、すぐに困ったような、でもどこか愛らしい苦笑いを浮かべて視線を落とした。
「よくそう言っていただくことはあるのですが、本当に何もしていないんです。スカウトの方にお声をかけていただくことも、学生時代から確かにありました。でも、私、どうしてもあの華やかな世界が怖くて。」
彼女はグラスを持つ指先を少し見つめながら、言葉を紡いだ。
今の仕事は、丸の内にある中堅の精密機械メーカーで、総務の事務職をしているそうだ。
毎日、朝の9時にタイムカードを押して、備品の発注をしたり、社内の書類をファイリングしたり。それが日常。お給料も、同世代のOLの方と全く同じ、目立つのが本当に苦手だそうだ。
エクセルと、備品発注。そのあまりにも地味な単語と、目の前に座る女神のような容姿のギャップに、私は思わず小さく笑ってしまった。
「エクセルですか。関数なんかを使ったりするのですか。」
「はい。むしろそれがないと仕事が終わらなくて。マクロを組むのは少し苦手なんですけれど。」
彼女は嬉しそうに目を輝かせた。その表情は、ステージの上のモデルではなく、紛れもない働く女性の素朴さそのものだった。
なぜ、これほどの逸材が一般職のOLとして埋もれているのか。その謎の輪郭が、少しずつ見えてきた。彼女は、自らの持つ天性の美貌という才能に振り回されることを拒み、自分の等身大の幸せを、地に足の着いた生活の中に求めているのだ。それは、欲望が渦巻くこの東京において、信じがたいほどの贅沢であり、同時に奇跡的な清廉さだと思えた。
THE SALONの真実とオーダーメイドという贅沢
美咲さんとの会話が進むにつれ、私の意識は自然と、彼女と私を引き合わせてくれたTHE SALONという存在に向かっていった。
東京には数多くの交際クラブやマッチングプラットフォームが存在する。その多くは、数の論理で動いている。男性は高い入会金を払い、女性は面接を通過すれば、システム上に何百、何千というプロフィールが並び、カタログをめくるように相手を探す。そこにあるのは、かつて通い詰めたエンターテインメント空間と同じ、記号化された消費の論理だ。
また、手軽さを謳うマッチングアプリを開けば、そこにあるのはプロフィールの偽装や業者の介入、そして際限のないメッセージの往復という徒労である。何度も時間とエネルギーを無駄にし、辟易してきた男性も少なくないはずだ。
しかし、THE SALONが提供している世界は、それらとは一線を画している。このクラブの最大の特徴は、完全紹介制・完全面談制を貫き、機械的なマッチングを一切排除したオーダーメイドのセッティングにある。
入会を許される男性は、社会的地位や経済力はもちろんのこと、何より大人の余裕と洗練されたマナーを持ち合わせているかどうかが厳しく審査される。一方で、女性会員の側も、単に容姿が美しいというだけでは決して審査を通過できない。品格、知性、言葉遣い、そして何より男性と過ごす時間を、どれだけ価値あるものに高められるかという内面的なクオリティが求められる。
そして、実際のセッティングは、システムが自動で行うのではない。経験豊富なコンシェルジュが、男性のこれまでの歩み、趣味嗜好、さらには今、どのような人生のフェーズにあり、どんな刺激や癒やしを求めているかという、言葉にできないニュアンスまでを対話から汲み取る。その上で、膨大な会員の中から、この二人であれば最高の化学反応が起きると確信した1人だけを、文字通りオーダーメイドで仕立て上げるのだ。
クラブの会員構成を見渡すと、確かに芸能関係の卵や、知名度のあるインフルエンサー、華やかな夜の世界を彩る煌びやかな女性たちも少なくない。彼女たちは自己プロデュースに長け、男性を楽しませる術を知っている。それはそれで、ひとつの完成された時間として素晴らしい。
だが、このクラブの真の恐ろしさと、圧倒的な付加価値は、美咲さんのような一般の世界に佇む、至高の原石を、そのネットワークの中に確実に取り込んでいる点にある。
マッチングアプリでは出会えないであろう相手との対峙
美咲さんのような女性は、絶対に一般的なマッチングアプリには登録しない。自分の顔写真がネット上に流出するリスクを何よりも恐れるし、品性のない男性からの無遠慮なアプローチに晒されることを嫌うからだ。また、いわゆる大手の交際クラブのような、あからさまにシステム化された出会いの場にも、プライドと恐怖心が邪魔をして足を踏み入れることはない。
そんな彼女たちが、なぜここだけに籍を置くのか。それは、コンシェルジュとの間に、絶対的な信頼関係があるからに他ならない。
実は、こちらのTHE SALONのコンシェルジュの方には、本当に親身になってお話を聞いていただいたんです。美咲さんは、運ばれてきた白ワインに口を付けながら、穏やかに語った。
私の友人が先に登録していて、ここならプライバシーは完璧に守られるし、本当に紳士的で、人生の経験が豊富な素晴らしい方しかいないから、世界が広がるよって勧めてくれて。最初はすごく緊張して面談に行ったんですけど、担当の方が私の目立ちたくない、静かに出会いたいというワガママな気持ちを全て受け止めてくださって。無理なセッティングは絶対にしない、あなたに本当に合う方だけをご紹介します、と言ってくださったんです。
彼女は私を見て、少し頬を染めた。
先日、●●さんとお会いできると伺ったときも、コンシェルジュの方が、とてもクリエイティブで、お優しくて、大人の余裕をお持ちの方だから、美咲さんも緊張せずに楽しめますよって、太鼓判を押してくださって。だから、こうして安心してお会いすることができました。
その言葉を聞いて、私はTHE SALONの審美眼と、そのマッチングの妙技に、改めて心の内で拍手を送っていた。
彼らが提供しているのは、単なる美しい女性とのデートという機会ではない。男性にとっては、自らの人生の格にふさわしい、奇跡のような出会いであり、女性にとっては、自らの尊厳とプライバシーを守られながら、最高の紳士と出会える安全地帯なのだ。この、双方のニーズが完璧なバランスで調律されたオーダーメイドの空間こそが、ここが最高峰と呼ばれる理由なのだろう。
完璧な肉体と素朴な内面の調和
夜が更けるにつれ、私たちの会話はさらに深いところへと潜っていった。ワインバーの静謐な空気が、二人の距離を自然と縮めていく。
私は彼女の話を聞きながら、その見た目と中身の強烈なコントラストに、ずっと心地よい目眩を覚えていた。
彼女のプロポーションは、どこからどう見ても、一晩で大金が動くような世界の中心にいるべきものだ。グラスを持つ長い指、少し開いた胸元からのぞく美しいデコルテ、足を組み替えるたびに揺れるワンピースの裾。そのすべての挙動が、映画のワンシーンのように絵になる。
しかし、その口から語られる内容は、驚くほど等身大で、慎ましく、そして微笑ましいものばかりだった。
普段、お休みの日は何をされているのですか、と尋ねると、彼女は少し恥ずかしそうに笑った。
本当に普通の、地味な生活ですよ。土曜日はお洗濯をまとめてして、近くのスーパーに買い出しに行って。あ、お料理を作るのが好きなんです。最近は、いかに手際よく、常備菜を1週間分作り置きできるかっていうのに凝っていて。
作り置き、ですか。例えばどんなものを。
きんぴらごぼうとか、ほうれん草のお浸しとか、鶏の胸肉を柔らかく茹でたものとか。本当に、お弁当のおかずみたいなものばかりです。日曜日は、お気に入りのスニーカーを履いて、近所の緑が多い公園を1時間くらい散歩して、帰りにカフェで小説を読むのが一番の贅沢なんです。
銀座の高級フレンチでキャビアを突いていたり、港区のタワーマンションのラウンジでシャンパンを飲んでいる方が、よほど彼女の容姿にはお似合いだ。しかし彼女は、1パック数百円の野菜を吟味し、公園のベンチで文庫本をめくる時間に、心からの充足を感じている。
話せば話すほど、美咲さんの味わいが出てくる
その話を聞いているうちに、私は彼女がモデルをやらない理由の、もうひとつの側面に気づいた。
彼女は、あまりにも聡明なのだ。美貌というものが、どれほど世間に消費されやすいものであるか。華やかな世界に身を投じることが、どれほど自分の精神を摩耗させるか。彼女は本能的に、あるいはその高い知性によって、それを理解しているのだろう。だからこそ、周囲からの誘惑をすべて断ち切り、自分を守るために普通のOLという、強固な鎧を身に纏っているのだ。
そして、その鎧を脱ぎ去り、本当の自分として大人の社交を楽しむための、唯一の鍵として、彼女はこの特別な場所を選んだのだ。
●●さんは、お仕事でいつもお忙しそうですが、お休みの日はどうされているんですか。今度は彼女から質問があった。
私は自らのライフスタイルについて、少しだけ語った。長年駆け抜けてきたクリエイティブの世界のこと、会社を大きく育て、それを次の世代に引き継いだこと。今は表参道にオフィスを構え、信頼できる少数の仲間たちと、本当にやりたい仕事だけを自由なペースで楽しんでいること。休日に緑豊かなコースでゴルフを楽しみ、自然の風を感じる時間が、何よりのディレクションになっていること。
彼女は私の言葉を一言も聞き漏らさないよう、まっすぐな瞳で聞いていた。その表情には、年上の男性に対する純粋な敬意と、知的な好奇心が溢れていた。
素晴らしいですね。美咲さんは小さくため息をついた。
自分の軸を持って、お時間をクリエイトされてきた方のお話は、聞いていて本当にワクワクします。私の周りには、そうやって人生を自分でコントロールされている大人の男性がいないので。今日、●●さんとお話しできて、本当に世界が広がるような気持ちです。
彼女のその言葉には、1ミリのお世辞も含まれていなかった。ただただ、純粋な感動が、その美しい声に乗って私の胸に届いた。
多くの女性は、男性の経済力や社会的地位、あるいは乗っている車のブランドを見て、目を輝かせる。しかし彼女は、私の生き方そのものに、知的な関心を寄せてくれている。そのことが、私にとっても新鮮な喜びであった。
西麻布の夜は更けて
ボトルに入っていた白ワインはいつの間にか空になり、バーテンダーが2杯目の赤ワインを提案してくれた。ナパ・ヴァレーの、濃厚でスパイシーなカベルネ・ソーヴィニヨン。重厚なグラスに注がれた深いルビー色が、彼女の白い肌とのコントラストでさらに鮮やかに映える。
美咲さん、少しお腹は空いていませんか。何か軽いものでもつまみましょう。
あ、ありがとうございます。実は……少しだけ、甘いものが食べたくなってしまって。
彼女は悪戯が見つかった子供のように、はにかんだ。
バーテンダーに目配せすると、彼は心得たように、特製の生チョコレートと、季節のフルーツをあしらった小さなデザートプレートを出してくれた。
わあ……綺麗。
彼女は少女のように声を弾ませ、フォークを取った。チョコレートを一口大に切り、口に運ぶ。その一連の動作すら、ラグジュアリーブランドのCMを見ているかのような錯覚に陥るほど美しい。
美味しいです。幸せ……。
目を細めて微笑む彼女を見て、私はこの夜の贅沢の正体について考えていた。
なぜ、モデル並みの美女が、何もせずにOLをしているのか。その謎は、もう完全に解けていた。彼女は、自らの美しさを世間に切り売りすることを拒み、自らの内面と、プライベートな人生のクオリティを最も大切に生きている。だからこそ、彼女の美しさは、消費されることなく、濁りのないクリスタルのような透明感を保ち続けているのだ。
そして、そんな彼女と出会い、二人きりで濃密な時間を過ごせるという贅沢。これは、どれほどお金を積んでも、一般的なルートでは決して手に入らないものだ。かつての遊び場や、数字だけが並ぶ安価なツールで何十人もの女性とやり取りを繰り返したとしても、このレベルの奇跡に巡り会える確率は、限りなくゼロに近い。
選ばれた男性にしか経験が出来ないTHE SALON
すべては、THE SALONという、選ばれた者だけが集まるコミュニティの、完璧なまでのオーダーメイドの仕立てによるものだ。彼らが男性の格を見極め、女性の質を担保し、その二つの人生が交差する瞬間を最も美しい形でプロデュースする。その職人技とも言えるセッティングの妙に、私は改めて深い満足感を覚えていた。
●●さん。美咲さんが、少し潤んだ瞳で私を見つめた。ワインのアルコールが、彼女の美しい頬を、ほんのりと桜色に染めている。
私、今日は本当に楽しかったです。最初はすごく緊張していたんですけど、●●さんがお優しくお話を聞いてくださって。いつも会社と家を往復しているだけの毎日に、こんなに素敵な魔法のような時間があるなんて、夢みたいです。
彼女は嬉そうに微笑み、私のグラスに自分のグラスをそっと重ねた。チィン、と、静かな店内に、美しいクリスタルの音が響き渡る。
あの……。彼女は少し躊躇うように、しかし決意を秘めた目で私を見た。もし、よろしければ……また、こうしてお会いさせていただくことはできますか。今度は、●●さんのお好きな、お寿司のお話とか、もっとたくさん伺いたいです。
もちろんです。喜んで。私は温かく微笑んだ。次回は、私がいつも行っている、少し面白いお寿司の店をお供させてください。そこなら、ドレスコードも気にせず、リラックスして楽しめますから。
はい! 楽しみにしています。彼女の顔に、今日一番の、どんなトップモデルのポートレートよりも輝かしい、心からの笑顔が咲いた。
バーを出ると、西麻布の夜風は、先ほどよりも少し冷たさを増していた。私は通りでタクシーを拾い、彼女のためにドアを開けた。
はい。●●さん、本当にありがとうございました。おやすみなさい。
タクシーのリアウィンドウの向こうで、彼女が小さく手を振る。その姿が、東京の夜の光の中に溶けて消えていくまで、私は見送っていた。
ポケットの中で、スマートフォンが小さく震えた。コンシェルジュからのメッセージだろう。私は画面を開くことなく、それをポケットにしまい、心地よいワインの余韻に浸りながら、自らの愛車が待つ場所へと歩き出した。
東京の夜は、深く、そしてまだ終わらない。THE SALONが仕掛ける、オーダーメイドの贅沢な物語は、これからも私の人生に、予期せぬ極上のスパイスを加え続けてくれるのだろう。そんな確信を胸に、私は西麻布の静寂な路地を、ゆっくりと進んでいった。
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