前回までのあらすじ

社交の戦場から、密室の揺り籠へ
彼女のその一言は、ラウンジの静寂を切り裂く合図だった。 席を立ち、ホテルの車寄せへと向かう佐都さんの後ろ姿は、相変わらず隙がない。タイトなドレスの裾から覗く、ジムで鍛え上げられたふくらはぎのラインが、街灯の光を浴びて艶やかに沈み込む。彼女が歩くたびに、かすかに香るウッディでスパイシーな香水――それは自己主張のためではなく、他者を寄せ付けないための防壁のように機能していた。
向かったのは、西麻布の路地裏にひっそりと佇む、完全紹介制の割烹だった。 看板はなく、ただ重厚な一枚板の扉があるだけ。中に入ると、磨き上げられた白木のカウンターが、職人の手元を舞台のように照らし出している。
席に着くと、彼女は小さく息を吐き、バッグを隣の席に置いた。その瞬間、彼女を覆っていた「鉄壁のビジネスパーソン」としての緊張感が、ほんの数ミリだけ緩んだのを私は見逃さなかった。
「こういう、大人の隠れ家のような場所は落ち着きますね。普段、大学院のゼミや内定先では、常に誰かの視線に晒されていますから」
そう言って彼女が注文したのは、辛口の日本酒。 最初の乾杯のとき、彼女の指先が私のグラスに微かに触れた。冷ややかな皮膚の温度。しかし、その奥にある血流の速さを予感させるような、不思議な緊張感が指先から伝わってきた。
M&Aの論理と、肉体の反逆

料理が運ばれてくる。職人が厳選した旬の食材が、美しい器に盛られている。 佐都さんは、事前の宣言通り、出された料理の中から炭水化物を極限まで避けて箸を進めた。お造りのツマすらも、栄養素を計算するかのように見つめる。
「本当に、徹底しているんですね」
と声をかけると、彼女は少し誇らしげに、しかし自嘲気味な笑みを浮かべた。
「私にとって、自分の身体をコントロールできないことは、敗敗を意味します。M&Aの世界でも同じです。デューデリジェンス(資産査定)を怠り、自社のガバナンスが効かなくなった企業から、市場で淘汰されていく。肉体も同じです。一度でも甘えを許せば、それは自己管理能力の欠如として現れてしまう」
彼女の語る言葉は、どこまでもドライで、論理的だ。24歳にして、企業の買収や統合の裏にある血も涙もない数字のゲームを分析している彼女の脳内は、常に最適解を求めるアルゴリズムで満たされている。
しかし、私がその「論理の壁」の裏側を見つめるように、彼女の目をじっと見つめ返すと、彼女の言葉がふと途切れた。
「……何ですか? 私の顔に、何かついていますか?」
彼女の口調は相変わらず強気(ドS)だが、その視線がわずかに泳いだ。完璧に管理されているはずの彼女の呼吸が、ほんの少しだけ浅くなる。 どれほど知性で武装しようとも、目の前にいるのは、圧倒的な経験値を持つ大人の男性。彼女がどれだけ「私を高く買いなさい」と市場価値(お手当10枚のプライド)を誇示しようとも、その本質は「自分を正しく評価し、支配してくれる存在」を渇望している幼子のようなものだった。
彼氏という名の虚構、そして主動権の逆転
「そういえば、彼氏がとても独占欲が強いと言っていましたね」
あえて、彼女が張った伏線に触れてみる。彼女は日本酒を一口含み、喉を鳴らして飲み干してから、挑戦的な目を向けた。
「ええ。私が他の男性と会っていると知ったら、彼は狂ってしまうかもしれません。でも、彼には私を完全に縛ることはできない。彼は私の『外側』しか見ていませんから。私の成績、私の内定先、私のこの身体……。でも、私が本当に求めているものには、彼は気づきもしないんです」
彼女の言う「彼氏」とは、実在の人物であると同時に、彼女が日常で演じている「完璧なヒロイン」を補完するための記号に過ぎないのではないか。そう直感した。彼女は、その彼氏ですらコントロールできない自分を愉しんでいる。同時に、そんな自分を「お仕置き」してくれるような、絶対的な強者を求めているのだ。
「佐都さんは、誰かにすべてを委ねて、楽になりたいと思ったことはないの?」
私の言葉に、佐都さんの箸がピタリと止まった。 彼女の頬が、お酒のせいだけではない、微かな赤らみを帯びる。
「……楽になる、ですか? 私は常に、上に立つ人間でありたいと思っています。誰かに命令される筋合いはありません」
言葉では拒絶している。しかし、彼女の長い睫毛が細かく震えていた。 彼女が日々行っているパーソナルトレーニング。筋肉を極限までいじめ抜き、トレーナーの指示に従って肉体を痛めつける行為。それ自体が、彼女にとっての「合法的な服従」の手段だったのではないか。知性を司る脳を休ませ、肉体を他者に委ねる快感。それを、彼女は精神の領域でも求めている。
「本当にそうですか? 君の目は、もっと違うものを欲しがっているように見えるけど」
私が静かに、しかし断定的なトーンで告げると、彼女はふっと視線を落とした。 その瞬間、彼女の纏っていた「ドS」のオーラが、砂の城のように崩れ落ちた。代わりに現れたのは、ただ一人の、渇望に震える24歳の女性の素顔だった。
剥がれ落ちる仮面、深まる夜
ディナーが終わりに近づく頃、彼女の日本酒のペースは上がっていた。 いつもなら完璧にセーブするはずのアルコール。それを自ら破っていること自体が、彼女の「理性の崩壊」の始まりだった。
「私……」 佐都さんが、消え入りそうな声で呟いた。
「いつも、緊張しているんです。おばあちゃんの名前に恥じないように、大学院でもトップでいられるように、内定先でも『使える人間』だと思われるように。でも、時々……すべてを壊して、誰かに『お前は何も考えなくていい』って、乱暴に扱われたくなるんです……」
ついに、彼女の口から「中身のドM」の本音が漏れ出た。 潤んだ瞳でこちらを見上げる彼女の表情には、先ほどの冷徹な研究者の面影はどこにもない。そこにあるのは、ただ圧倒的な支配を求める、従順な雌の顔だった。
彼女の告白は、西麻布の夜の静寂に深く沈み込んでいった。 カウンターの下で、彼女の手が、私の膝の上にそっと置かれた。驚くほど熱を帯びたその手が、助けを求めるように微かに震えている。
「……次の場所、連れて行ってくれませんか? 好きな場所に」
知性の鎧を脱ぎ捨てた佐都さんは、今や私の命令を待つ、従順な人形へと変貌を遂げようとしていた。

シゾン公式の交際クラブに入り浸る交際オヤジのYouTubeを公開中
交際クラブ(デートクラブ)に入り浸る会社経営者のYouTubeチャンネルです。現在ユニバース倶楽部・THE SALONに入会し日々デートを繰り返して、寂しさを紛らわして疑似恋愛「投資恋愛」に勤しんでいます。 出会いは無限大。だけどクオリティの高い出会いを経験したい方にとって、有益な情報を今後届けていきます。
・交際クラブについて、もっと知りたい。
・愛嬢(愛人)をつかみ取るためにはどうすればいいか解らない
・もっと自分の人生を謳歌したい。
と思っている男性の方はいつでもご相談ください。
交際クラブ「ユニバース倶楽部」に興味を持っている方であればいつでもLINEで対応中です。


